意外とホームページが重要な参考資料ブログ:30-12-22
もう、ずいぶん遠い昔の話…
上のむすめが小学校に入学して間もなく、
「どんな人になりたいか?」という宿題を持って帰った。
「どんな人かなぁ〜」と考えあぐねた末、
ぼくに助けを求めて来た。
「人の心の痛みのわかる人間になって欲しい」と言ったところ、
すかさず下のむすめが、
「こころって何、どこが痛いの?」と聞いてくる。
すると
「こころってな、胸、ここ、ここで…」と
七才の姉貴は三才のいもうとの小さな手を取り、教えていた。
ぼくはなんと説明していいか、戸惑ってしまった。
あれから二十数年、
二人のむすめはそれぞれの道を歩んで成長した。
下のむすめは、文学に興味を示した。
小さい頃からよく本を読んだ。
感動した本に出会うと、瞳を輝かせたりウルウルさせたりで、
心の起伏を素直に表わした。
そのうち、楽しいにつけ悲しいにつけ文を書く事を覚えた。
それは家族一人一人に宛てた誕生日のメッセージであったり、
先生や友人、離れて住む祖父母のもとにもよく手紙を書いた。
下のむすめは六年生になったばかりの春、
2年間闘病を続けた祖父の死に直面した。
父親の最後の病室からでて来た手紙の束…
あの剛健で頑固な父親からは想像もつかない様な、
涙の後が点々と残された手紙…
そこには
「病気に負けないで」とか
「頑張って」といった文字は無い。
「今日の給食はひじきごはんだったよ」とか
「もうすぐ修学旅行に長崎に行くよ」とか、
たわいのない日常が綴られていた。
むすめは手紙という一つの手段で、
死を直近に控えて眠れぬ真夜中を過ごしたであろう祖父を、
励まし力づけ心の支えになっていた事を初めて知った。
むすめの書いた手紙にほんの一時でも、
痛みを忘れた真夜中があったかと思うと
ぼくは心が救われる思いがした。